バランス戦略と姿勢の関係:足と股関節が教えてくれること
2025年09月9日
(リーフスタジアムや横須賀南警察署、エニタイムフィットネス久里浜店さんの並びにございます。)
日常生活の中で「つまずきやすい」「立っていると疲れやすい」「気づくと前かがみになっている」と感じる方はいませんか? その背景には「姿勢のバランス戦略」が関わっているといわれています。近年の研究から、人間の体は「足関節」と「股関節」の使い分けによって直立や歩行の安定を保っていることが分かってきました。本日は、二つの学術研究を紹介しながら、姿勢とバランス制御のメカニズムについて解説します。
姿勢制御はどのように働いているのか?

例えば、電車の中で揺れを受けたときには、足首を細かく動かす「アンクル戦略」でバランスをとったり、股関節を大きく使う「ヒップ戦略」で体幹を支えたりしています。
この「どの関節に頼るか」という戦略は、周囲の環境や個人の体の状態によって変化します。つまり、単純に「足首を強くすればいい」「股関節を柔らかくすればいい」というものではなく、その人にとって不足している感覚や筋肉の働きを補い合う仕組みが存在しているのです。
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古典的研究:Horakら(1990)の報告
バランス戦略に関する代表的な研究として、Horak、Nashner、Dienerらによる1990年の報告があります。
彼らは、前庭系(耳の奥にある平衡感覚)や体性感覚に障害を持つ患者の姿勢戦略を比較しました。その結果、
• 前庭障害のある人 → ヒップ戦略をあまり使用しない傾向がある。
• 体性感覚に障害のある人 → 足関節の情報が使いづらいため、代わりにヒップ戦略を多用する。
という特徴が示されました(Horak et al., 1990)。
つまり、人間の体は「どこかの感覚が弱まれば、残っている別の部位で補う」という柔軟なシステムを備えていることが分かります。
最新の研究:高齢者と矢状面不均衡(sagittal imbalance)
2023年にItoらが発表した研究(Ito et al., 2023)では、矢状面不均衡(sagittal imbalance)と呼ばれる姿勢の乱れに着目しました。これは、体を横から見たときに、頭や体幹の重心が骨盤より大きく前にずれてしまう状態を指します。
この研究では、68名の不均衡群と36名の正常群を比較し、腰部の多裂筋や下腿の腓腹筋に振動刺激を与えて姿勢反応を分析しました。その結果、矢状面不均衡を持つ高齢者は、股関節の感覚入力を使った姿勢制御が弱まり、足関節戦略に頼りやすくなることが明らかになったのです。
二つの研究をどうつなげるか?
• Horakらの研究:足の感覚が弱い → 股関節を多用して代償。
• Itoらの研究:股関節・体幹の感覚が弱い → 足関節を多用して代償。
つまり、弱い部分を補うために、残っている部位に依存するという点で共通しています。
過剰使用はサインかもしれない

• 足関節ばかりでバランスを取っている人 → 体幹や股関節の固有受容が十分に働いていない可能性。
• 股関節ばかりでバランスを取っている人 → 足関節や足底の感覚が低下している可能性。
つまり、「どの部位を過剰に使っているか」は、別の部位の機能低下を示すサインになり得るのです。
整骨院でできるサポート

例えば、
• 足裏の感覚を呼び起こす簡単なバランスエクササイズ
• 体幹の深層筋を意識する呼吸運動や安定化トレーニング
• 日常生活の中での「立ち方」「座り方」の工夫
など、姿勢戦略を多角的にサポートする方法があります。
まとめ
• 感覚が弱い部分があれば、残された部位で代償する(Horak et al., 1990)。
• 高齢者の矢状面不均衡では股関節入力が弱まり、足関節戦略に頼る傾向がある(Ito et al., 2023)。
• どの部位を「過剰に使っているか」を観察すると、隠れた機能低下のヒントになる。
• 整骨院でのサポートは、筋力だけでなく感覚や体幹の安定性を高めることも大切。
バランス戦略の理解は、転倒予防や姿勢改善を考える上で大きなヒントになります。ご自身の立ち姿勢や歩き方に気になる点がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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参考文献
1. Horak FB, Nashner LM, Diener HC. Postural strategies associated with somatosensory and vestibular loss. Exp Brain Res. 1990;82(1):167-177.
2. Ito T, Taniguchi Y, Uesugi K, et al. Proprioceptive reliance on trunk muscles for maintaining postural stability decreases in older patients with sagittal imbalance. Gait Posture. 2023;106:14-20. doi:10.1016/j.gaitpost.2023.06.016





