自律神経の乱れに悩める方へ。ポリヴェーガル理論とは。
2024年06月27日
ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)は、アメリカの神経科学者、スティーヴン・ポージェス(Stephen Porges)博士によって提唱された理論です。この理論は、自律神経系、特に迷走神経(ヴァーガス神経)に焦点を当て、私たちの感情的および社会的行動にどのように影響を与えるかを説明しています。
ポリヴェーガル理論の基本概念
本来、自律神経は交感神経と副交感神経に2分されて論じられることが多く、ざっくり興奮、覚醒を司る交感神経と興奮の沈静化とリラックスを司る副交感神経が存在すると言われてきました。
最近では副交感神経をさらに2種類の迷走神経に分ける理論が支持されてきています。
横須賀悠整骨院の自律神経調整にも一部応用されている理論なのでご説明いたします。
ポリヴェーガル理論では、自律神経系を以下の三つの主要な経路に分けて説明します:
1. 腹側迷走神経経路(Ventral Vagal Pathway)
2. 交感神経経路(Sympathetic Pathway)
3. 背側迷走神経経路(Dorsal Vagal Pathway)
1. 腹側迷走神経経路(Ventral Vagal Pathway)
腹側迷走神経経路は、顔、喉、心臓に関連しており、社会的なつながりや安全感を感じるときに活性化されます。この経路が活発であるとき、私たちはリラックスし、社会的交流や親密な関係を築くことができます。
顔、つまり表情筋などを司っていることからも、人間を人間たらしめているコミニュケーションや「つながり」を司る神経でもあり、腹側迷走神経がうまく使えていないと表情が乏しくなtたり声が出づらくなるなどの特徴があります。
逆にこの領域へのアプローチが適切に行えると表情筋の動きが変わることもあります。
2. 交感神経経路(Sympathetic Pathway)
交感神経経路は、戦うか逃げるかの反応(Fight or Flight)に関連しています。ストレスや危険を感じると、交感神経が活性化され、心拍数が上がり、体は即座に行動を取る準備をします。
過剰に働かせすぎると不眠や興奮状態、ひどいと過呼吸などの交感神経優位症状が出ることもあります。
3. 背側迷走神経経路(Dorsal Vagal Pathway)
背側迷走神経経路は、凍りつき反応(Freeze Response)に関連しています。極度のストレスや絶望を感じたときに活性化され、エネルギーを節約し、生存を図るために身体がシャットダウンするような状態になります。
発生学的には一番古くから存在する自律神経であると言われており、爬虫類などにも存在します。
休息や消化吸収を司り、ここが機能しづらくなると便秘や下痢につながったり、うまく交感神経の抑制ができなくなることがあります。
ポリヴェーガル理論の意義
ポリヴェーガル理論は、心理療法、特にトラウマ治療において非常に重要な概念となっています。以下の点でその意義があります:
1. トラウマの理解と治療:トラウマを経験した人々が、なぜ特定の状況で特定の反応を示すのかを理解する手助けとなります。
2. 安全感の提供:施術者がクライアントに安全感を提供するための方法を学ぶことができます。
3. 身体的反応の理解:感情的なストレスが身体にどのように影響を与えるかを理解し、それに対処する方法を学ぶことができます。
実生活での応用
ポリヴェーガル理論は、日常生活にも応用することができます。例えば、次のような方法で役立てることができます:
1. 深呼吸や瞑想:腹側迷走神経を活性化させ、リラックスと安全感を感じるための方法です。
2. 社会的なつながり:家族や友人との良好な関係を築くことで、腹側迷走神経を活発に保ちます。
3. 自己認識の向上:自分自身の身体的反応を理解し、適切に対処することで、ストレスを管理しやすくなります。
まとめ
ポリヴェーガル理論は、自律神経系と感情、行動との関係を深く理解するための重要な理論です。この理論を理解し、実生活に応用することで、ストレス管理や社会的関係の改善、トラウマ治療に役立てることができます。日常生活の中で、ポリヴェーガル理論の考え方を取り入れて、心と体の健康を保ちましょう。