手首の骨折は、骨がつけば終わりではありません

2026年09月1日

神奈川県横須賀市久里浜と北久里浜の中間に位置する接骨院・整体院の横須賀悠整骨院です。

「転んで手をついたら手首が腫れてきた」「ギプスを外した後も握力が戻らない」——そんなご相談が、特に60代以降の患者さまから増えています。今回は、手首の骨折のなかでも頻度が高い「橈骨遠位端骨折」について、2024年に発表された研究をもとに、保存療法という選択肢の意味を丁寧にご説明していきます。

橈骨遠位端骨折とはどのような状態か

橈骨遠位端骨折は、前腕にある橈骨という骨の、手首に近い部分が折れる骨折です。転倒した際にとっさに手をついてしまい、その衝撃が手首に集中することで起こります。特に骨密度が低下しやすい閉経後の女性や、バランス機能が落ちてきた高齢の方に多く見られ、日常生活のちょっとしたつまずきや、雨の日の滑りやすい路面、庭仕事の最中に足を取られるといった場面がきっかけになることも少なくありません。

段差のない室内でも、靴下や布団につまずいて手をついてしまい骨折に至るケースもあり、特別に激しい運動や事故がなくても起こりうる身近な外傷のひとつです。加えて、犬の散歩中にリードを引っ張られてバランスを崩す、雪や霜で凍った駐車場で足を滑らせるなど、季節や生活環境によっても転倒のきっかけはさまざまです。

こんな様子があれば注意してください

  • 転倒後、手首を動かすと強い痛みが走る
  • 手首の周辺が腫れ、内出血で変色している
  • 手首の形がいつもと違って見える、変形している
  • 物をつかむ、蛇口をひねるといった動作で握力の低下を感じる
  • 手をついたまま体重を支えられない
  • ペットボトルのふたが開けにくい、雑巾を絞りにくい

軽い捻挫だと思って様子を見てしまう方もいますが、痛みや腫れが強い場合は骨折の可能性があるため、早めに医療機関でのレントゲン検査を受けていただくことをおすすめします。特に手首が明らかに曲がって見える場合や、指先までしびれが広がる場合は、様子を見ずに受診されたほうが安心です。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。

ギプス固定と手術、何が違うのか

橈骨遠位端骨折の対応には、大きく分けてギプスなどによる保存療法と、プレートで骨を固定する手術療法があります。どちらを選ぶべきか、これまで明確な答えは多くありませんでした。

2024年にAlanaziらが発表したシステマティックレビュー・メタ解析では、65歳以上の橈骨遠位端骨折患者を対象とした13件のランダム化比較試験、合計2400名分のデータが統合されました。その結果、受傷から1年が経過した時点での手関節の機能、握力、痛みの程度について、手術療法と保存療法のあいだに臨床的に意味のある差はほとんど見られなかったと報告されています。

この研究は、痛みの評価や機能スコアといった指標を横断的に比較したものであり、骨折の種類や転位の程度がさまざまな患者を対象にしている点には留意が必要です。それでも、高齢の方にとって身体への負担が大きい手術を選ばなくても、ギプスなどによる保存的なアプローチで日常生活に必要な機能を取り戻せる可能性があるという結果は、治療方針を考えるうえで参考になる情報だと感じています。もちろん骨折の形や転位の程度によって適応は異なるため、担当医の判断が前提となりますが、選択肢の幅を知っておくことには意味があると考えています。

姿勢や日常の動作が経過に与える影響

骨がつながっていく過程では、手首だけでなく身体全体の使い方が影響します。例えば、猫背の姿勢が続くと肩や肘の可動域が狭くなり、リハビリ中の手のつき方や体重のかけ方に偏りが出やすくなります。また、日常生活で片手ばかりをかばう癖がつくと、反対側の肩や首に負担が集中し、新たな不調につながることもあります。

洗面台で顔を洗う、買い物袋を持つ、パソコンのキーボードを打つ、朝食の支度で鍋を持ち上げる——こうした何気ない動作のなかにも、手首の負担を左右する要素が隠れています。杖をつく際に骨折した側の手首をかばって反対の肩に力が入りすぎているケースもあり、当院ではこうした生活動作のクセにも目を向けながらお話を伺うようにしています。長年の家事や趣味の作業で身についた手の使い方の癖が、回復のペースに影響していることも珍しくありません。

そのままにしておくとどうなるか

痛みが軽くなったからといって自己判断で放置してしまうと、骨が正しい位置からずれたまま固まってしまう「変形癒合」が進んでしまうことがあります。そうなると手首の可動域が狭くなったり、握力が戻りにくくなったりして、瓶のふたを開ける、タオルを絞る、孫を抱き上げるといった日常の動作に支障が出るケースも見受けられます。

また、手首をかばう期間が長引くことで、肩関節の動きが硬くなる、いわゆる二次的な不調につながることもあります。ギプスを外した後にリハビリを行わないまま過ごしてしまうと、関節が硬くなったまま可動域が戻りにくくなる場合もあるため、経過を見ながら少しずつ動かしていくことが大切です。骨折そのものの治療は医療機関が担いますが、その後の可動域の回復や生活動作への戻し方については、私たちがお手伝いできる部分が多くあります。

転倒を防ぐために見直したい生活習慣

橈骨遠位端骨折は再発を防ぐという視点も大切です。日中に軽いウォーキングを続けて下肢の筋力を維持すること、玄関や廊下にマットや電気コードを置きっぱなしにしないこと、夜間トイレに起きる際は必ず明かりをつけてから歩き出すこと。こうした小さな積み重ねが、次の転倒のリスクを下げることにつながります。視力の変化に気づきにくい方もいるため、めまいや足元のふらつきを感じる場合は眼科や内科での確認も選択肢のひとつです。

横須賀悠整骨院での対応

当院ではまず、現在の可動域や握力、痛みの出る動作を丁寧に確認するところから始めます。そのうえで、関節の動きを妨げている周囲の筋肉や軟部組織に対して手技によるアプローチを行い、日常生活のなかで負担をかけにくい手の使い方についてもアドバイスをしています。手首まわりだけでなく、かばう動作で負担が集中しやすい肩や肘の状態もあわせて確認するようにしています。

施術の際は、痛みの少ない範囲から少しずつ手首を動かす練習を取り入れ、握力の回復具合を見ながら次の段階に進めるようにしています。ご自宅で無理なく続けられる簡単な運動も、生活スタイルに合わせていくつかご提案しております。

久里浜・北久里浜周辺にお住まいの方はもちろん、通院に不安のあるご高齢の方には、ご家族の送迎に合わせた時間帯のご案内など、無理のないペースで通っていただけるよう配慮しております。

迷ったときはご相談ください

「これくらいの痛みで相談していいのだろうか」と迷われる方も多いのですが、早い段階でご相談いただくことで、その後の生活への影響を小さくできることがあります。ギプスが外れた後の可動域や握力の戻り方に不安を感じている方は、遠慮なくお声がけください。

初めてご来院いただく際は、いつ、どのような状況で転倒したか、現在どの動作で痛みや違和感が出るかをお伺いします。医療機関でのレントゲン写真をお持ちいただける場合は、経過を把握するうえでも参考になります。ご家族が付き添いで一緒にお話を聞かれることも歓迎しております。

まとめ

橈骨遠位端骨折は、特に高齢の方にとって身近な骨折のひとつです。今回ご紹介した研究では、手術と保存療法のあいだで1年後の機能に大きな差がなかったと報告されており、選択肢を知っておくことは今後の生活の質にも関わってきます。大切なのは、治療方針が決まった後の過ごし方や、可動域を取り戻すための地道な積み重ねです。骨折後の経過や日常生活への不安があれば、当院までお気軽にご相談ください。

参考文献

Alanazi AA, et al.「Surgical vs. Conservative Treatment of Distal Radius Fractures in the Elderly: A Systematic Review and Meta-Analysis」Cureus. 2024;16(12):e75879. doi:10.7759/cureus.75879

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39759677/