膝の外側だけが痛む、その理由
2026年09月7日
膝の外側だけが痛む、その理由
神奈川県横須賀市久里浜と北久里浜の中間に位置する接骨院・整体院の横須賀悠整骨院です。
「歩いていると膝の外側だけがズキッとする」「階段を下りるときに膝の横がひっかかるように痛む」――このようなお悩みで来院される方が、当院では季節を問わず一定数いらっしゃいます。走る習慣がある方はもちろん、健康のために毎日のウォーキングを続けている中高年の方や、坂の多い久里浜周辺を散歩コースにされているシニアの方からも、同じような訴えをよく伺います。
今回は、太ももの外側から膝にかけて伸びる「腸脛靭帯」という組織にまつわる不調、いわゆる腸脛靭帯症候群について、最近発表された保存的治療に関するシステマティックレビューをもとにご紹介します。

腸脛靭帯症候群とはどのような状態か
腸脛靭帯は、骨盤の外側から太ももの外側を通り、膝のすぐ下(すねの骨の外側の出っ張り)まで続く帯状の組織です。膝を曲げ伸ばしする際、この靭帯が太ももの骨の外側にある出っ張り(大腿骨外側上顆)の上を前後に動きます。歩行やランニングのように膝の曲げ伸ばしを繰り返す動作が続くと、この部分に摩擦や圧迫が繰り返しかかり、周辺の組織に負担が蓄積していきます。これが腸脛靭帯症候群と呼ばれる状態の背景にある一般的な考え方です。
ランナーに特に多いとされていますが、実際には長距離のウォーキングや登山、自転車、階段の多い生活動線でも似たような負担がかかることがあり、走る習慣のない方でも症状が出ることがあります。
こんな症状に心当たりはありませんか
- 膝の外側、皿のやや上あたりがズキッと痛む
- 歩き始めや走り始めはさほど気にならないが、距離が伸びると痛みが強くなる
- 下り坂や下り階段で特に痛みを感じやすい
- 押すと痛む場所がはっきりしている(膝の外側、骨の出っ張りのあたり)
- ひどいときは、正座や階段の上り下りでも違和感が出る
これらの症状が一つでも当てはまる方は、腸脛靭帯まわりに負担が積み重なっているサインかもしれません。

原因として考えられる要因
ご紹介するシステマティックレビューは、ランナーの腸脛靭帯症候群に対する保存的な治療戦略を扱った13件のランダム化比較試験・観察研究をまとめて検討したものです。この中では、ストレッチや筋膜リリース(フォームローラーなど)といった直接的なアプローチだけでなく、股関節まわりの筋力、とりわけ股関節を外側に開く筋肉(中殿筋など)の弱さが症状に関わっている可能性が繰り返し取り上げられています。
股関節の外転筋が十分に働かないと、歩行や走行中に骨盤が反対側に傾きやすくなり、結果として膝の外側にかかる負担が増えると考えられています。また、走るフォームの癖(膝が内側に入りやすい、歩幅が狭く接地時間が長いなど)や、片側だけに負担が偏る生活動作も、負担の蓄積に関与しているとされます。
なお同レビューでは、能動的な運動(筋力トレーニングやフォーム修正)と受動的な施術(ストレッチ、マッサージ、テーピングなど)を単独あるいは組み合わせて比較した研究が集められていますが、どの方法が最も優れているかという明確な合意には至っていない、と結論づけられています。裏を返せば、一つの方法にこだわらず、状態に応じて複数のアプローチを組み合わせる視点が重要だということでもあります。
このほかにも、急に歩く距離や運動量を増やしたこと、履き慣れないシューズや底が擦り減った靴を長く使い続けていたこと、いつも同じ方向に傾いた道路や公園のトラックを歩き続けていたことなど、日々の生活の中に負担の積み重なる要因が隠れているケースは少なくありません。これらは一つひとつは些細なことに見えても、積み重なることで腸脛靭帯まわりへの負担として表れてきます。
似た症状と間違えやすい点
膝の外側の痛みというと、変形性膝関節症や半月板の損傷を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。ただし、腸脛靭帯症候群では膝の内部よりも、皿のやや上の骨の出っ張り付近に痛みの場所がはっきりしていることが多く、正座やしゃがみ込みそのものよりも、歩行や階段昇降といった膝を繰り返し曲げ伸ばしする動作で症状が強く出やすいという特徴があります。とはいえ、ご自身の判断だけで区別することは難しいため、痛みの場所や出方を丁寧に確認することが大切です。
姿勢や生活習慣との関わり
デスクワークが長い方は股関節の可動域が狭くなりやすく、立ち上がった瞬間や歩き出しに骨盤まわりの筋肉がうまく使えていないことがあります。また、片足に体重をかけて立つ癖や、いつも同じ側でバッグを持つ習慣なども、左右の負担の偏りにつながります。
シニア世代の方では、筋力そのものの低下に加えて、長年の歩き方の癖が積み重なっている場合も少なくありません。急に運動量を増やしたときや、久しぶりに長距離を歩いたときに症状が出やすいのはこのためです。

放置してしまうとどうなるか
初期の腸脛靭帯症候群は、動き始めに少し気になる程度で、休めば落ち着くことも珍しくありません。しかし、負担のかかり方そのものを見直さないまま同じ運動量を続けていると、痛みの出る距離がだんだん短くなったり、歩行そのものに違和感が残るようになったりすることがあります。
さらに、痛みをかばって歩き方が変わることで、股関節や反対側の膝、腰など、別の部位に負担が波及してしまうケースも見受けられます。「そのうち落ち着くだろう」と自己判断だけで様子を見続けるのではなく、早い段階で身体の使い方を確認しておくことをおすすめします。
当院での向き合い方
当院ではまず、痛みの出る場所やタイミング、日常での歩行量、運動習慣について詳しくお話を伺います。そのうえで、股関節や骨盤まわりの動き、膝の曲げ伸ばし時の動作、立位でのバランスなどを確認し、負担がどこに集中しているかを一緒に見ていきます。
股関節周辺や太もも外側の張りが強い場合は、その部分の状態を丁寧に確認しながら手技によるアプローチを行い、あわせて股関節の外転筋を意識したセルフエクササイズや、歩行・ランニング時のフォームについての助言もお伝えしています。運動を完全にやめる必要があるかどうかは状態によって異なるため、無理のない範囲での活動量の調整についても相談しながら進めていきます。
具体的には、片脚立ちをしたときに骨盤が横に傾かずに保てているか、階段を一段ずつ下りる際に膝がぐらつかずに支えられているかといった、日常の動きに近い形で身体の使い方を確認します。そのうえで、硬さの出やすい太もも外側や股関節まわりへの手技によるアプローチと、弱っている筋肉を働かせるための運動指導を組み合わせてお伝えするようにしています。
ご自宅でできる工夫
来院いただく合間にも、ご自宅で無理なくできることがあります。たとえば、横向きに寝た状態で上側の脚をゆっくり持ち上げる運動は、股関節の外側の筋肉を意識するのに役立ちます。また、長時間座った後に急に歩き出すのではなく、立ち上がってから軽く足踏みをして股関節まわりをほぐしてから動き出すだけでも、負担のかかり方が変わってくることがあります。ウォーキングやランニングを続けたい場合は、痛みが出ない範囲で距離や坂道の割合を調整しながら、少しずつ様子を見ていくことをおすすめします。
※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。
一人で抱え込まずにご相談ください
膝の外側の痛みは、我慢しながら運動を続けてしまう方が多い部位でもあります。しかし、負担のかかり方を放置したまま同じ動作を繰り返せば、症状が長引く可能性は否定できません。歩き方や運動習慣を見直すきっかけとして、お気軽にご相談ください。
まとめ
腸脛靭帯症候群は、太ももの外側から膝にかけて伸びる腸脛靭帯まわりに繰り返しの負担が蓄積することで生じる不調です。ランナーだけでなく、日常的によく歩く方や坂道の多い環境で生活する方にも起こり得ます。股関節まわりの筋力やフォームの癖が背景にある場合が多く、ストレッチや筋力トレーニングを含む複数のアプローチを組み合わせて向き合うことが大切だと、今回ご紹介したシステマティックレビューでも示唆されています。膝の外側に違和感を覚えたら、早めに身体の状態を確認してみましょう。
参考文献
Sanchez-Alvarado A, et al. “Effects of conservative treatment strategies for iliotibial band syndrome on pain and function in runners: a systematic review.” Frontiers in Sports and Active Living, 2024.





