上腕骨近位部骨折と保存的リハビリ
2026年09月4日
神奈川県横須賀市久里浜と北久里浜の中間に位置する接骨院・整体院の横須賀悠整骨院です。
「玄関先で転んで手をついたら、翌日から肩の付け根が腫れて上がらなくなった」「病院でギプスやバンドで固定してもらったけれど、いつから腕を動かしていいのか分からず、そのまま様子を見ている」――そんなお悩みで当院にご相談いただくことが、季節の変わり目には特に増えてきます。ご年配の方に多い上腕骨近位部の骨折は、手術をせず固定と運動で経過をみる保存療法が選ばれることが少なくありません。今回はその「動かし始めるタイミング」について、最新の研究知見をもとにお伝えしていきます。
上腕骨近位部骨折とはどのような状態か
上腕骨近位部骨折は、二の腕の骨(上腕骨)の肩に近い部分が折れる骨折です。転倒して手や肘をついたときや、階段の踏み外し、自転車での転倒、庭仕事や散歩中のちょっとした段差でのつまずきなどでも起こりやすく、骨がもろくなりやすい60代以降の女性に特に多く見られます。骨のずれが大きい場合や関節面に及ぶ場合は手術が検討されますが、ずれが軽度であれば、三角巾やアームスリングなどで固定しながら経過を見る保存療法が選択されるケースが多くあります。固定期間の目安や動かし始めの時期は病院ごと・症例ごとに幅があるため、ご自身の状態がどのあたりに当てはまるのか分かりにくいという声もよく聞かれます。年齢を重ねるほど骨の密度は下がりやすく、同じような転び方をしても骨折に至りやすくなるため、日頃から転倒そのものを防ぐ意識も大切になってきます。
受傷直後は、痛みや腫れの強さに驚かれる方がほとんどですが、時間の経過とともに落ち着いていくことが多く、そこからどのように腕を使っていくかが回復の分かれ道になります。当院でも、骨折そのものへの不安よりも、固定が外れたあとの「動かし方が分からない不安」に寄り添う場面が多くあります。

よく見られる症状
- 二の腕の付け根から肩にかけての腫れや内出血
- 腕を持ち上げようとしたときの強い痛み
- 反対の手で支えないと衣服の着脱がしづらい
- 夜間、寝返りを打つときに響くような痛み
- 数週間経っても肩の動きが硬いままの状態
動かし始めのタイミングをめぐる研究知見
2025年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析(Challoumas D, et al. BMC Musculoskeletal Disorders)では、保存的治療を受けた上腕骨近位部骨折の患者を対象に、受傷後1週間以内から可動域訓練を始める「早期可動化」と、3〜4週間の固定期間を経てから動かし始める「遅延可動化」を比較した6件のランダム化比較試験、合計470例分のデータが統合されました。早期に動かし始めたグループは短期的な機能スコアや痛みの指標で良好な傾向が示され、骨のずれが後から悪化したり合併症が増えたりする傾向は見られなかったと報告されています。一方で、対象となった研究は骨折の型が比較的単純なものに限られている場合が多く、粉砕が強いケースや骨の状態が弱い方にそのまま当てはめられるわけではない点にも注意が必要です。骨折の型や年齢、骨の強さによって適した時期は変わるため一律には言えませんが、固定期間を必要以上に長く取りすぎることが、かえって肩の硬さを長引かせる一因になり得るという視点は、リハビリの計画を考えるうえで参考になります。
姿勢や生活習慣との関わり
骨折後は痛みをかばって肩をすくめたり、腕を体に密着させたりする姿勢が習慣化しやすくなります。この状態が続くと、骨の癒合が進んでも関節包や周囲の筋肉が硬くなり、いわゆる「拘縮」に近い動きの制限が残ってしまうことがあります。デスクワークで前かがみの姿勢が多い方や猫背気味の方は、特に肩甲骨の動きが乏しくなりやすいため、日常の座り方や立ち方にも注意を向けていただきたいところです。テレビを見るときに骨折した側の肩だけ低くなっていたり、料理や洗い物のときに無意識に反対の手だけで済ませていたりと、小さなかばい方の積み重ねが、後々の動きにくさにつながっていきます。眠るときの姿勢も見落とされがちで、患部側を下にして丸まって眠る癖がつくと、日中のかばい方がさらに強まってしまうこともあります。

そのままにしておくとどうなるか
痛みが落ち着いたからといって腕を動かさない期間が長引くと、肩関節の可動域が狭くなったまま固まってしまい、髪を結ぶ、洗濯物を物干しざおにかける、棚の上のものを取るといった動作がしづらくなることがあります。一度硬くなった肩は後から動かそうとしても時間がかかりやすいため、適切な時期に無理のない範囲で動かし始めることが、その後の生活動作のしやすさに影響してくると考えられます。特に利き腕を骨折された場合は、字を書く、箸を使う、着替えるといった毎日の細かな動作にも影響が及びやすく、生活の不便さが長引くことにもつながりかねません。
リハビリの進み方の目安
保存療法での回復は、大きく分けて三つの段階を踏んで進んでいくことが多いといわれます。受傷直後から数日は、腫れと痛みを落ち着かせることが最優先で、固定した状態での安静が中心になります。その後、主治医の許可が出た段階から、指先や手首、肘を動かす運動、痛みのない範囲での肩の振り子運動など、ごく小さな動きから始めていきます。そして固定が完全に外れる頃から、肩甲骨まわりの運動や少しずつ角度を広げていく可動域訓練へと移行していくのが一般的な流れです。ただし、この進み方はあくまで目安であり、骨の状態や年齢、痛みの出方によって前後することも多いため、焦らず段階を踏むことが結果的に近道になります。

当院での対応
当院ではまず、骨折の経過や主治医からの固定期間の指示を丁寧に確認したうえで、現在の肩・肘・手首の動きや腫れの状態をチェックします。そのうえで、痛みの範囲内で行える振り子運動や肩甲骨まわりのやさしい運動から段階的にご案内し、周囲の筋肉の緊張が強い部分には手技によるアプローチも取り入れながら、無理のないペースで可動域を広げていくお手伝いをしています。「どこまで動かして良いのか分からない」という段階でも、実際の肩の動きや腫れの引き具合を見ながら一緒に判断していきますので、ご自身の感覚だけで無理に動かしたり、逆に必要以上にかばい続けたりする必要はありません。日常生活での腕の使い方やご自宅でできるセルフケアについてもあわせてお伝えし、固定が外れてからの数週間は特に、動きの変化を細かく確認しながら進めるようにしています。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。
よくいただくご質問
「手術をしなかったけれど、本当にこのままで大丈夫でしょうか」というご質問をよくいただきます。骨のずれが軽度であれば、保存療法でも十分な機能回復が見込めるという報告は少なくありませんが、経過観察のレントゲンで骨のつき方を主治医に確認していただくことが前提になります。また「痛みがなくなったら、もう普段どおりに使っていいのか」という点については、痛みが引いた後もしばらくは重い荷物を持つ、腕を大きく振るといった動作は控えめにし、少しずつ負荷を戻していくことをおすすめしています。ご自身だけで判断がつきにくいときは、遠慮なく現在の状態をお聞かせください。
おわりに
上腕骨近位部骨折からの保存的リハビリは、固定と運動のバランスをどう取るかが回復の鍵になります。ご自身の判断だけで動かす・動かさないを決めるのは不安も大きいと思いますので、主治医の指示と合わせて、身体の状態を一緒に確認しながら進めていきましょう。横須賀市久里浜・北久里浜エリアで肩や腕の骨折後のケアにお悩みの方は、横須賀悠整骨院までお気軽にお越しください。
参考文献
Challoumas D, Minhas H, Bagni S, Millar N. Early versus delayed mobilisation for non-surgically treated proximal humerus fractures: a systematic review and meta-analysis of randomised trials. BMC Musculoskeletal Disorders. 2025.





