足首の捻挫グセ、その正体と向き合い方
2026年09月3日
神奈川県横須賀市久里浜と北久里浜の中間に位置する接骨院・整体院の横須賀悠整骨院です。
「昔から足首が弱いんです」。問診でそう話される方は、思いのほか多くいらっしゃいます。学生時代に一度大きく捻って以来、なんとなく片方だけ頼りない。買い物帰りに歩道の段差でぐらついた。旅行先の坂道で、また同じところをやってしまった。そんな出来事が何年も続くと、多くの方は「これは自分の体質だから」と結論づけてしまいます。
けれども、繰り返す足首のぐらつきには、体質という言葉だけでは片づけきれない背景があります。今回はその話を、最近の研究報告を交えながら整理してみます。
「捻挫グセ」と呼ばれてきた状態
足首の捻挫を何度も繰り返し、ぐらつきや崩れそうな感覚が長く続く状態を、医療の現場では慢性足関節不安定症と呼びます。英語の頭文字をとってCAIと書かれることもあります。
最初に捻ったとき、靭帯や関節を包む組織は少なからず傷みます。腫れと痛みが引いて日常生活に戻れるようになると、たいていの方はそこで区切りをつけるでしょう。ところが、傷んだ組織が元どおりの張りを取り戻すまでには時間がかかります。足首まわりの筋肉の使い方や、足の裏から地面の傾きを感じ取るはたらきも、捻挫の前とは変わってしまうことがあるのです。
痛みが消えたことと、足首が本来の働きを取り戻したこと。この二つは、同じではありません。

「回復した」と判断する時期のずれ
ご相談を受けていて感じるのは、回復の目安を痛みだけに置いている方が多いということです。
歩けるようになった。階段も上れる。だからもう平気だろう、と。実際、日常の動作は数週間で戻ってくることがほとんどです。ところが、足首がとっさの傾きに反応する働きは、そのペースでは戻りません。平らな廊下を歩くぶんには問題がなくても、庭仕事でしゃがんだまま体をひねった瞬間や、電車で急ブレーキがかかったときに、足首だけが遅れて反応する。そういう場面で、差がはっきりします。
つまり、日常生活に戻れた時期と、足首が備えを取り戻した時期のあいだには、しばしば数か月単位の開きがあるのです。この空白の期間に何もしないままだと、次の捻挫の準備が整ってしまいます。
こんな心当たりはありませんか
- 平らな道でも、ときどき足首が外側に傾いてヒヤッとする
- 片方の足首だけ、しゃがんだときに深く曲がらない
- 長く歩いた日の夕方、外くるぶしの周りが重だるくなる
- 砂利道や芝生など、不安定な地面を無意識に避けている
- 靴底の外側だけが極端にすり減っている
ひとつでも当てはまるようでしたら、足首が過去の捻挫の影響を引きずっている可能性があります。
研究が示した、手を使ったケアの位置づけ
2026年に学術誌『Disability and Rehabilitation』で公表された系統的レビューとメタ解析では、慢性足関節不安定症に対する徒手療法について、2000年から2025年初めまでに発表された13件のランダム化比較試験、のべ497名分のデータがまとめられました。
そこで報告されているのは、足関節の動く範囲と、本人が感じている足首の機能(CAITという質問票で測ります)について、統計的に意味のある改善が確認されたという内容です。
ただし著者らは慎重です。その改善の幅は「患者本人が実感できる最小の変化量」には届いておらず、根拠の確からしさも高いとは言えない、とはっきり述べています。手技だけで劇的に何かが変わる、という話ではないのです。
そのうえで示されたのが、徒手療法にバランス訓練や筋力訓練を組み合わせる進め方が、慢性足関節不安定症のリハビリでは理にかなった組み合わせだろう、という見方でした。手で関節や筋肉に働きかけ、動きやすくなったところで自分の力で支える練習を重ねる。この二段構えが要になります。
暮らしの中に潜む負担
足首の状態は、日々の習慣と切り離せません。
たとえばスリッパ。かかとが固定されないため、足の指で引っかけるようにして歩く癖がつきやすく、足首の外側に細かなブレが生じます。久里浜周辺は坂道や不揃いな路面も多く、下り坂では体重が前のめりにかかるぶん、足首の踏ん張りが求められます。
もうひとつ見落とされがちなのが、立ち方です。台所に立つとき、いつも同じ側に体重を預けていませんか。片側だけに荷重が偏る時間が長いほど、足首の左右差は開いていきます。
靴の選び方も関わります。かかとの芯がやわらかくなった靴を履き続けると、着地のたびに足首が外へ流れやすくなります。歩く距離が長い方ほど、その劣化に気づくのが遅れがちです。玄関に並んだ靴を裏返して、外側のすり減り方を左右で見くらべてみてください。片方だけが極端に減っているようなら、体重のかかり方に偏りがある証拠です。
座っている時間の長さも影響します。一日の大半を椅子の上で過ごせば、ふくらはぎが動く機会は減り、足首の可動域は静かに削られていく。夕方に立ち上がった一歩目がぎこちないという方は、その積み重ねを疑ってよいと思います。

そのままにしておくと
不安定な足首をかばい続けると、体は無意識のうちに別の場所で帳尻を合わせようとします。膝の外側が張る、股関節の動きが硬くなる、腰の片側だけ重くなる。足首から離れた場所に不調が出て、初めて相談にみえる方も少なくありません。
再び捻る回数が増えることも心配です。とくに年齢を重ねてからの転倒は、手首や大腿骨の骨折につながることがあります。足首の頼りなさを「慣れ」で済ませてしまうと、その先の生活の幅が静かに狭まっていきます。
※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もあります。
当院での確認とアプローチ
まず伺うのは、最初に捻ったのはいつか、その後どんな場面で不安を感じるか、という経過です。次に、左右の足首をくらべながら動きを確認します。しゃがんだときのすねの傾き、片足立ちで何秒安定していられるか、つま先立ちの高さ。こうした簡単な動作からでも、左右差はよく見えてきます。
そのうえで、硬くなっている部分には手技で対応し、足首まわりだけでなく、ふくらはぎや股関節の動きもあわせて整えていきます。動きが出てきたら、ご自宅でできるバランス練習や、足の指を使う運動をお伝えします。研究が示した組み合わせを、生活の中に落とし込むためです。
セルフケアとしてお伝えするものは、決して難しいものではありません。たとえば歯を磨いているあいだだけ片足で立つ。テレビを見ながら、足の指でタオルを手繰り寄せる。玄関で靴を履く前に、足首をゆっくり大きく回す。生活の中にすでにある動作へ、少しだけ足首の仕事を足していく形です。特別な時間を確保しなくてよいぶん、続きやすいという利点があります。

気になったときの相談先として
何度も捻っているけれど病院に行くほどではない。そう感じている状態こそ、当院がご相談を受けている領域です。痛みがない時期だからこそ、確認しておく価値があります。
いつ捻ったのか、どんな場面で不安を感じるのか。うまく説明できなくても構いません。「なんとなく頼りない」という言葉から始めていただければ、そこから一緒に確かめていきます。
この記事のまとめ
- 繰り返す足首の捻挫は「体質」ではなく、慢性足関節不安定症と呼ばれる状態のことがあります
- 2026年のメタ解析では、徒手療法によって足首の可動域と自覚的な機能の改善が報告されました
- 一方で改善の幅は限られており、バランス訓練や筋力訓練との組み合わせが望ましいとされています
- 足首の不安定さは膝や腰にも波及し、転倒のリスクにもつながります
- 痛みが落ち着いている時期の見直しが、その後を左右します
参考文献
Salminen I, Schroderus N, Takatalo J. Effectiveness of manual therapy with and without exercise in chronic ankle instability for pain, mobility, and function: a systematic review and meta-analysis. Disability and Rehabilitation. 2026年2月2日オンライン公開. DOI: 10.1080/09638288.2026.2620954
PMID: 41627928





