アキレス腱症と運動療法という選択
2026年10月8日
神奈川県横須賀市久里浜と北久里浜の中間に位置する接骨院・整体院の横須賀悠整骨院です。
「歩き始めに、かかとの少し上がズキッとする」「階段を下りるとき、アキレス腱のあたりが突っ張る感じがする」そんな違和感を抱えたまま、湿布を貼って様子を見ている方は少なくありません。当院にも、朝の一歩目だけ痛む、犬の散歩の後半になるとだるさが抜けない、といったご相談で来院される方が続いています。今回は、アキレス腱の慢性的な痛みと、その向き合い方について、最近発表された研究をもとにお話しします。
アキレス腱に起こる変化とは
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ、体の中でもっとも太く強い腱です。歩く、走る、階段を上り下りするといった日常のあらゆる動作で負荷を受け続けています。この腱に繰り返し負荷がかかり、微細な損傷と修復のバランスが崩れると、腱の組織そのものに変性が起こり、痛みや腫れ、こわばりといった症状につながることがあります。これを「アキレス腱症」と呼びます。
急に強い衝撃を受けて切れる「腱断裂」とは異なり、アキレス腱症は数週間から数ヶ月かけてじわじわと進行することが多く、初期段階では見過ごされやすいという特徴があります。かかとの骨に近い部分で起こるタイプと、腱の中央あたりで起こるタイプがあり、痛む場所や動作によって現れ方が少しずつ違います。

よく相談される症状
来院される方からうかがう症状には、次のような傾向があります。
- 朝起きて最初の数歩、かかとの上あたりに痛みが出る
- ウォーキングやランニングの後半になると違和感が強くなる
- かかとの少し上を指で押すと、腫れぼったさや圧痛がある
- 正座や階段の昇り降りで、アキレス腱がつっぱる感覚がある
- 靴を履き替えると症状が和らいだり悪化したりする
- 立ち仕事の後、ふくらはぎからかかとにかけて重だるさが残る
こうした症状は一時的な筋肉痛と区別がつきにくく、「そのうち落ち着くだろう」と数週間そのままにされる方も多いのですが、負担がかかる動作を変えないまま過ごすと、違和感が長引きやすい傾向があります。

負荷が偏る原因を考える
アキレス腱症は、単一の原因で起こるというより、いくつもの要因が重なって発生すると考えられています。ふくらはぎの柔軟性の低下、足首の可動域制限、扁平足や甲高といった足の形状的な特徴、急な運動量の増加、体重の変化、合わない靴の使用などが代表的な例です。加齢に伴って腱の水分量や弾力性が徐々に変化することも、40代以降にアキレス腱症の相談が増える一因とされています。
姿勢や歩き方の癖も無関係ではありません。膝や股関節の動きが硬くなると、着地のたびにアキレス腱まわりへの負担が増えることがあります。たとえば、普段はほとんど歩かない方が、週末にまとめて長距離を歩いたときに痛みが出るというケースをよく耳にします。反対に、毎日決まった距離を歩いている方でも、靴底がすり減ったまま履き続けていたために負荷のかかり方が変わり、症状が出てくることもあります。
家事の場面でも、台所に長時間立ちっぱなしで作業をしたあとにふくらはぎの張りを感じたり、庭仕事でしゃがんだり立ったりを繰り返した日の夜にかかとの重さを自覚したりと、ご本人が気づかないうちに負荷が積み重なっていることがあります。こうした日々の積み重ねは、痛みが出てから振り返って初めて気づく方が多いのが実情です。
運動療法についての新しい知見
2026年にBMC Musculoskeletal Disorders誌に発表された系統的レビュー・メタ解析では、アキレス腱症の患者を対象とした21件のランダム化比較試験をまとめて検証しています。その結果、かかとをゆっくり下げながら腱を伸ばすように負荷をかける「エキセントリック運動(遠心性運動)」と呼ばれる運動療法が、痛みの軽減と関連していたことが報告されています。あわせて、超音波検査で確認できる腱の状態にも変化が見られたと述べられています。
エキセントリック運動とは、段差の縁につま先立ちで乗り、かかとをゆっくり下げていくような動作を指します。筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する場面を意識的に取り入れることで、腱の組織に段階的な刺激を与えていく考え方です。回数や角度は人によって適切な範囲が異なるため、自己流で急に始めるのではなく、まずは状態を確認したうえで取り入れることが望ましいとされています。
この研究はあくまで既存の臨床試験を統合した分析であり、症状の程度や経過には個人差があります。ただ、腱に段階的な負荷を与えていく運動が、保存的なケアの選択肢のひとつとして注目されていることは、臨床の現場でも実感するところです。急に強い負荷をかけるのではなく、痛みの出ない範囲から少しずつ回数や角度を増やしていく進め方が大切だとされています。
放置するとどうなりやすいか
アキレス腱症を我慢しながら運動や仕事を続けていると、症状が慢性化し、日常のちょっとした動作でも痛みが出るようになることがあります。かばうような歩き方が習慣化すると、反対側の脚や腰、膝にまで負担が及ぶケースも見られます。長年ウォーキングを日課にしていた方が、痛みをきっかけに外出そのものを控えるようになってしまうことも珍しくありません。
また、強い痛みや急激な腫れ、力が入らないといった症状が急に現れた場合は、腱の部分的な損傷が隠れている可能性もあります。階段を踏み外したときのような一瞬の強い衝撃のあとに、それまでと違う鋭い痛みを感じた場合は、自己判断でケアを進めず、専門的な検査を受けていただくことをおすすめします。※状態によっては医療機関での検査をおすすめする場合もありますので、いつもと違う強い痛みや腫れがあれば、早めにご相談ください。
当院で行っていること
当院では、まず歩行時や立ち上がり動作を確認し、どの場面で痛みが強くなるかを丁寧にうかがいます。そのうえで、足首の可動域やふくらはぎの柔軟性、アキレス腱周囲の状態を手指で確認します。左右差や、普段の靴の減り方なども合わせて見ていきます。
必要に応じて、ふくらはぎからアキレス腱にかけての手技によるケアを行い、こわばった組織にゆっくりとアプローチします。あわせて、ご自宅でも取り組みやすいストレッチや、段階的に負荷を上げていく運動の進め方についてもお伝えしています。急に強い運動を始めると逆に負担が増えることもあるため、痛みの状態をこまめに確認しながら、無理のない範囲で少しずつ進めていくことを大切にしています。
靴選びや日常の歩き方についても、気になる点があれば遠慮なくお尋ねください。加齢とともに腱の状態は変化していきますので、年代に合わせた負荷の調整もあわせてご案内しています。長年愛用しているスニーカーでも、底の減り方や芯材のへたりによって足首の角度が変わり、アキレス腱への負担が増していることがあります。来院の際に普段お使いの靴を見せていただき、一緒に確認することもあります。

相談をお考えの方へ
かかとの上あたりの痛みは、放っておいても悪化しないこともあれば、じわじわと長引くこともあり、ご自身だけで判断するのが難しい症状でもあります。「これくらいで相談していいのか」と迷われる方も多いのですが、初期の段階でご相談いただいたほうが、日常生活への影響を小さく抑えやすいと感じています。
まとめ
かかとの上あたりの痛みや突っ張り感は、我慢して動き続けるうちに慢性化しやすい症状です。今回ご紹介した研究では、段階的に腱へ負荷をかける運動療法が、保存的なケアの選択肢として関心を集めていることがうかがえます。ご自身の生活動作や歩き方の癖に合わせたケアの進め方について、当院でも一緒に確認していきますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
参考文献
Yuan F, Ren K, Zhao Z, Wang P, Song L.
“The efficacy of eccentric exercise in the treatment of Achilles tendinopathy: a systematic review and meta-analysis.”
BMC Musculoskeletal Disorders, 2026.
PMID: 42021217





